通常のヨウ素、セシウムであれば水に溶けてイオン化した状態でも逆浸透膜浄水器は95%以上の高率で除去をする事が出来ます。これが同位体の放射性物質に変化しても物性(水中での振る舞い)は大きく変わりませんから、通常のヨウ素/セシウムと同様の除去率が推定されます。これは他の物質についてもイオン化して電荷を持つ物質については同様です。
放射性物質は厳格に管理されるべき危険物質であるため勝手に移動、持ち出しをする事が出来ませんから当店を含め浄水器メーカーは実際に放射性物質が検出された場所で浄水器の性能試験を行っています。それらの公開されたデータを見ると逆浸透膜式浄水器メーカーの浄水ではいずれも「検出せず」の結果となっています。
当店では船橋市の水道水で67ベクレルの放射性ヨウ素が検出されていた時に保育園のユーザー様のご協力を得てフィルター交換後6ヶ月の状態で水道水と浄水の水質検査を(財)日本分析センターで行いました。当店逆浸透膜浄水器を通過後の浄水は「検出限界以下」となり、除去性能の推定値を裏付ける結果と考えています、また逆に除去できない理由が今のところ考えられません。(但し、この検査は原水(水道水)と浄水の2検体を(財)日本分析センターへ持ち込んで検査依頼したもので、第三者機関の監視下で連続した透明性を保った検査ではありませんから当店内部資料に留めております。)
放射性物質について米国の当店技術アドバイザーから米国の
公的機関EPA(United States Environmental Protection Agency)へ電話による問い合わせしました。EPAによると「放射性ヨウ素、放射性セシウムについての明確な除去性能データは世界中どこにも無いはず。その理由の一つとして放射性物質には半減期があり、放射性物質の低減が浄水機能によるものか、半減期によるものか、それを区別する方法が無く、検査方法が確立していない。」
「但し、水中に溶解してイオン化した放射性物質に対して対応出来る浄水器方式は逆浸透膜式もしくはイオン交換となる」が米国EPAの見解です。
EPA見解に補足して蒸留式浄水器ならイオン化した放射性物質も除去可能ですが、造水量が4時間で2g位の浄水器が多く、エネルギー(電気代)コストも高くなりますので家庭での煮炊きに使用するには少し無理がありそうです。
イオン交換はビーズ状の樹脂表面への吸着となりますので両面テープの様に吸い付ける場所が無くなってしまうとフィルター寿命が終わります。ここで吸着するのは放射性物質だけではなく全ての不純物イオンですから、不純物濃度の高い都市部で使用する場合にはフィルーター交換もそれに応じて頻繁に行う必要があります。
逆浸透膜浄水器は不純物を溜め込むフィルターでは無く、分離膜で30〜35%位の水分子を抜き取った後の不純物を含んだ水は排水として排水管へ連続的に排水して行く構造ですので95%位の高い除去率を長期間(3〜5年:逆浸透膜フィルター耐用期間)維持する事が出来るのです。
逆浸透膜浄水器以外で放射性物質が除去可能とされている場合、これには2つ考えられます。
@水に完全に溶けていない粒子の大きな塊状の放射性物質なら除去できる。
A濾材にイオン交換樹脂が使用されている、イオン交換樹脂が添加された活性炭などを使用している。
@について
塩を水に溶かす様子を思い浮かべて下さい、小さな粒状の塩はやがて水に溶けて見えなくなってしまいます。金属系の物質が水に溶けるとイオンとなります。これは原子1個と同じ大きさですから通常の自然界では一番小さな状態の物質です、水に溶けきれなかった物質は容器の底に沈殿します。
溶ける前の塩の様に粒子の大きな状態の放射性物質なら捕まえられても、イオン化した放射性物質は活性炭や精密濾過膜(家庭用浄水器に使用される中空糸膜)は、ほぼ100%通過してしまいます。最初に問題となった、東京都の金町浄水場では高度浄水処理で活性炭濾過を行っていますし擬集沈殿を行っています(この沈殿した汚泥の放射性物質がまた問題となっている訳ですが)。この様にまるで浄水器の様な行程を浄水場で行っているので大きな粒子の不純物が水道管まで流出してしまう可能性は極めて低いと考えられます。水道水まで残留して問題となっているのはイオン化して小さくなった放射性物質です、これは水に溶けた塩を回収する様な作業になりますから、一般的な浄水器でイオン化した放射性物質が除去出来るならば、そもそも水道水に残留して問題となる事もありません。
逆浸透膜浄水器はイオン化した物質が持つ+−の電荷に水分子が取り付き(水和)、不純物を取り囲む事で不純物+水分子と構成半径を大きくしてを分離して行きます。水に溶ける物質は+又は−に電荷を持ちますので水に溶けやすい物質は逆浸透膜浄水器にとって除去しやすいのが特徴です。
Aについて
イオン交換樹脂は樹脂の表面へ両面テープの様に水中のイオンを吸着します、イオン交換樹脂の表面が不純物で埋まってしまうと吸着する場所が無くなり、フィルターの寿命となります。1年間使用するフィルターであれば相当な量のイオン交換樹脂が必要になりますのでシンク下に小さく収まるような浄水器となりません。
例えば福島県など水道水の原水となる河川水の不純物量が少ない地域と東京都心部など不純物量が多い地域ではイオン交換樹脂フィルターの寿命は明確に異なります。これは放射性物質だけではなくイオン化している不純物全てに対して吸着をする為、不純物量の多い地域ではフィルター寿命が短くなります。利根川水系で考えても栃木で蒸発残留物濃度40〜50ppmが東京では100ppmとなり千葉市では150ppmと河川の下流域に来るほど、不純物量が増えてしまいます。これは栃木なら3ヶ月持つフィルターが東京では1ヶ月半、千葉では1ヶ月しか持たない事を意味します。
活性炭を主体とした浄水器でイオン交換樹脂を添加すれば浄水器の初期性能を高める事は出来ますが、コンパクトな浄水器では数週間でイオン交換樹脂の性能は落ちてしまうでしょう。1年使用するフィルターであれば1年経過後にも同様の性能を維持していなければなりません。
逆浸透膜浄水器が高い除去性能を長期間維持できるのは不純物を分離して排水として捨てる分離膜で、フィルターに汚れを貯め込む構造では無いからです。
「浄水器のフィルターに放射性物質が蓄積されませんか?」とご心配されるお客様からご質問を頂きました。これはインターネットの記事の中に放射性物質を除去できる浄水器は内部に放射性物質を溜め込んでしまう危険があると紹介されていたのをご覧になられての様です。
確かにイオン交換樹脂などで放射性物質を吸着すれば、その様な危険性についても配慮しなければならないのかも知れませんが、逆浸透膜浄水器の場合は分離膜ですので、スポンジ状のフィルターがゴミを引っかけて貯めて行く様な仕組みとは異なります。
原水から30〜35%位の水分子を分離膜から通過させて浄水を造り、残りの放射性物質等、不純物を含んだ水は排水として連続的に浄水器の外へ排出、下水管へ流してしまいます。
逆浸透膜浄水器はフィルターへ放射性物質を貯める事はありません。
例えば粒子の大きな放射性物質が水道水中に存在するとしたら逆浸透膜手前に配置されているゴミ取りフィルターや活性炭フィルターに蓄積される恐れがありますが、大きな粒子の不純物は浄水場での擬集沈殿や活性炭濾過で取り除かれ、水道管まで流出する可能性は極めて低いでしょう。
浄水場から流出して問題となっているのは水に溶けてイオンの状態になって存在している放射性物質です。これは単原子と同様の大きさですから自然界で一番小さな状態の物質となり、活性炭や精密濾過膜など通常の浄水器のフィルターは通過してしまいます。
逆浸透膜浄水器でもプレフィルターは通過してしまい、逆浸透膜で分離され、排水として浄水器の外へ捨てられて行きます。